心房細動の血栓で手足が壊死!?その意外な治療法
高齢者に多いといわれる心臓がけいれんする病気が「心房細動」です。推定患者数は130万人。その4割には心臓がけいれんしているという自覚がないといいます。しかも、心房細動による血栓で手足が壊死する危険もあるのです。気づかない心房細動のけいれんを早期に発見する方法と意外な治療法を紹介しましょう。
手足が急に動かなくなって壊死する
東京都の70歳の女性のケースを見てみます。スポーツが大好きで、健康のため長年水泳を続けてきたという女性。ある日、400mほど泳いだ女性は、右腕が重いことに気づきました。
筋肉痛かなと思いましたが、30分ほど休むとなんと回復。ややしびれが残ったものの、一晩寝れば治ると考えてそのまま就寝したのです。しかし、翌朝になってもまだ手のしびれがあるため病院へ…。すると心臓に原因があるという診断。しかも最悪の場合、右手が壊死して切断する可能性があるというのです。
81歳の男性のケースでは、ベランダで生き物の世話をしていたところ、左足が自分の足じゃないほど重くなったといいます。急に動けなくて救急車で病院にいったところ「6時間たったら足が壊死する」といわれたのです。
心房細動が原因で直径3cmの血栓
2つのケースはいずれも「心房細動」でした。心臓にある心房がけいれんする病気です。ちなみに、街中に設置されたAEDなどで電気ショックを与えて救助するのは「心室細動」。今回の心房細動とは別の心臓けいれんになります。
この心房細動が危ないのは、細動によって大きな血栓が作られることです。心臓がけいれんすると血液の流れが滞って、血の塊ができてしまいます。通常の血栓は、血管の傷をふさぐために血小板が集まってできる血の塊。その大きさは、米粒とスーパーボールくらいの差があります。
実際に心房細動で血栓ができている患者の心臓の映像を見てみると、たしかに直径3cmほどの血の塊が、心臓内の血液中を漂っているのがわかります。この血栓が血液の流れに乗って、心臓の外に飛び出してしまうのです。
血栓のとび先は、手や足を壊死させる以外にもさまざま。脳への血管なら脳梗塞、腸へ向かう血管なら腸管膜動脈閉塞、腎臓なら「腎梗塞」になります。血管が詰まると、その先の器官で壊死がおきるまでの猶予はおよそ6時間です。
心房細動の発見方法と意外な治療法
心房細動がおこりやすいのは副交感神経が活発な、夜から目覚める前にかけて。このため、朝起きたときと夜寝る前に脈を測って、脈拍が速くなっていないか、リズムや強弱が乱れていないかを確認するのです。
まずは3日間、朝起きるときと夜寝る前に脈を確認。それで以上が見られなければ、血栓ができるような心房細動はないと考えてよいでしょう。
心房細動の画期的な治療法を考え出したのは、フランスの天才医師ミッシェル・ハイサゲルさん。じつは、細動の原因は心臓ではなく「肺静脈」でした。
そこで、この肺静脈と心臓を隔絶してしまえば、異常な電子信号は伝わってきません。その隔絶する治療に使われるのがカテーテルです。細い管の先端に電極が付いています。電極カテーテルです。
心房細動は早期治療で90%以上は治る
心房細動の治療では、この電極カテーテルを足の付け根の血管から入れて心臓まで届かせます。そして、肺静脈の周りを焼くのです。そうすると、そこに電気が通らなくなり、余計な電気信号が心房には届かなくなります。
この治療法は時々心房細動になっている人には有効。まだ正常な心房のリズムがある人は、早期の治療で90%以上は治ってしまいます。
ただし長年、心房細動が続いている状態の人は、この方法では治らないことが多いとか。この場合は血栓をできにくくする治療を行います。
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