肺気腫治療に光明!発症メカニズムが明らかに
喫煙が招く代表的な肺の病気である「肺気腫」の発症メカニズムが発見されました。これにより、これまで開発困難とされていた肺気腫に特化した治療薬が、新たに開発されることが可能になったのです。肺気腫の発症メカニズムとその治療薬開発の可能性を詳しく見ていきましょう。
肺気腫患者の8割以上が喫煙者
喫煙によって引き起こされる代表的な病気に「肺がん」と「肺気腫」があります。「肺気腫」は呼吸苦を主症状とする疾患で、一般的に慢性的となるものではありますが、場合によっては重篤な呼吸不全をきたすこともあるのです。
肺は「肺胞」と呼ばれる0.1mm程度の小さな部屋が無数に集まってできていて、ここの肺胞の表面は「肺胞上皮」と呼ばれる特殊な細胞によって覆われた状態。息を吸って肺に入った空気は、最終的にこの肺胞に到達して、肺胞上皮細胞の働きよって、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が行われています。
肺気腫になると、肺胞上皮細胞が徐々に死んでいくとともに、肺胞の壁が破壊されて多数の肺胞がつながり合ったような大きな気胞が発生。その結果、酸素と二酸化炭素の交換効率が下がって呼吸不全となります。
肺気腫患者の8割以上が喫煙者であることから、タバコの煙の中に含まれる「オキシダント」が肺胞破壊の原因と考えられてきました。実際、オキシダントはさまざまなたんぱく分解酵素を活性化しており、この作用によって肺胞壁が破壊されていると考えられています。
肺気腫に対する治療薬開発への道
しかし、どのたんぱく分解酵素の活性化が肺胞壁の破壊につながるかは特定されておらず、肺気腫の治療薬の開発は困難でした。また、そもそもの肺胞上皮細胞が死滅する原因もよくわかっていません。
そして今回、近畿大学/広島大学/東京大学の研究グループは、肺気腫で肺胞上皮細胞が死滅するメカニズムを発見しました。肺気腫では、肺胞上皮細胞が持っている接着分子をたんぱく分解酵素が切断。それによってできた接着分子の切り株がミトコンドリアに集積することで、肺胞上皮細胞の死滅が起こっていることを明らかにしたのです。
今回の研究は、肺気腫に対する治療薬開発への道を大きく切り開きます。1つには、接着分子の切断を担っている特定のたんぱく分解酵素の阻害薬の開発です。研究グループは、すでにたんぱく分解酵素の特定にはある程度、成功しています。
もう1つは、接着分子の切り株がミトコンドリアに集積するのを阻害する薬剤です。こちらは、細胞内分子がミトコンドリアに集積するメカニズムは医繰るかの仕組みが知られているため、これらの類似性に着目しながらさらに細かなメカニズムを解明していく予定です。
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