早生まれはスポーツの世界では大きな損なのか?
いわゆる「早生まれ」は、スポーツの世界では大きなハンデとなります。野球とサッカーで誕生月別の選手数を4月~翌年3月で調べてみると、おおむね誕生月が後になるほど人数が減る傾向があるのです。早生まれがスポーツの世界でどのような影響を受けるのか詳しく見ていきましょう。
早生まれは成長日数が少なくなる
早生まれとは1月1日~4月1日生まれの人のこと。4月2日以降に生まれた人と同じ学年に組み込まれる結果、早生まれは最年少になります。このため、学年で区切ったときの「成長日数」は早生まれは少なくなっていまうのです。
そして、この成長日数が部活でのレギュラー/補欠の地位に直結します。同じ学年でも4月生まれと3月生まれでは、ほぼ1歳の年齢差があるということ。おのずと4月生まれのほうが高い運動能力を発揮します。
一方、ほぼ1学年下と同じ早生まれはなかなか運動能力が向上しません。すると、指導者は高い運動能力を発揮した4月生まれにより手厚い指導をすることになり、そのギャップが年々拡大していってしまうのです。
早生まれのプロ野球選手は少ない
こうして、早生まれはスポーツの世界で大きなハンデとなります。実際、ある年のプロ野球12球団の支配下登録の日本選手だと、最多は7月で87人。一方、最少は2月の34人で、3月が37人、1月が51人と続きます。つまり、早生まれのプロ野球選手は少ないということです。
同じ年のサッカーJ1に登録された日本選手も、最多が5月の68人で、次に多いのが4月の53人。早生まれの2月は17人しかいません。早生まれは大きなJリーガーになる大きなハンデとなっているのです。
高校世代は、その傾向がさらに顕著になります。ある年の全国高校野球選手権に出場した49校の登録選手では、もっとも多い4月の115人に対し、早生まれの3月は最少の34人でした。Jリーグなどの18歳以下のユースチームの登録選手も、最多の4月の228人に対し、早生まれの2月は最少の33人。4月の2割にも満たないのです。
早生まれはまず身体的に損な状況
実際、成長日数が短い早生まれの小中学生は身体的にも不利だという調査結果もあります。育成組織のJリーグアカデミーでは、Jリーグ各クラブのジュニアユース(中学生年代)の体格や運動能力を調査しました。
その結果、中1の平均身長は4~6月生まれの161.0cmに対し、早生まれは154.4cm。30mダッシュの平均タイムは4~6月生まれの4.75秒に対し、早生まれは4.88秒だったのです。
学年という区切りのある中では、早生まれは身体的に不利な状況。身体的に優位にプレイする子どもはレギュラーに選ばれる可能性が高く、不利にプレイする早生まれは補欠になる可能性が高くなります。このギャップがどんどん広がり、結果的に早生まれでプロスポーツ選手になれる人数が少なくなってしまうというわけです。
日本代表は早生まれが増えている
このように、早生まれはスポーツには不利だというのが通説。しかし、2014年のブラジルW杯の日本代表メンバーは、早生まれが23人中10人もいました。
1月生まれは今野、遠藤、長谷部、柿谷、2月生まれは青山、3月生まれは川島、権田、内田、酒井(高)、香川。過去5大会の代表では、1998年のフランスW杯で3人だった日本育ちの早生まれは、増加傾向にあるのです。
ちなみに、ロシアW杯の日本代表メンバーの早生まれは23人中7人でした。一方で、Jリーグの選手は早生まれの比率が低いというのも現状。サッカー日本代表が異質の傾向を示しているのです。
早生まれに国際経験を積むチャンス
じつは、代表クラスに関して早生まれは、育成年代からいろいろな刺激を受けるチャンスがあります。サッカーの年代別大会には17歳以下のU17W杯、20歳以下のU20W杯、23歳以下のオリンピックがあって、年齢制限の分けめは1月1日なのです。
そこで、主体となる学年より1つ上の学年の早生まれの選手が発掘されるというわけ。実際、2003年には早生まれだけをキャンプに呼ぶプロジェクトが行われました。代表クラスでは早生まれは国際経験を積むチャンスに恵まれやすいのです。
小中学校の環境では、体力的に劣る早生まれはおのずと脱落するもの。しかし日本代表のデータは、伸びしろを観察しながら子どもと向き合えば、早生まれでも成長することを示しています。早生まれに対する指導法を見直すべきかもしれません。