肛門括約筋の損傷による便失禁は手術で治る
若者や中年でも発症する便失禁。一般的に20~40代では、加齢によって肛門括約筋が衰えることはありません。若くして肛門括約筋が弱ってしまうのはなぜでしょうか? 12月10日放送『ためしてガッテン』の「便漏れ500万人の衝撃」で紹介されていました。
外肛門括約筋が出産によって欠ける
そこで、肛門括約筋を調べる肛門管超音波装置を使って、健康な人とそうでない人の肛門括約筋の様子を比べてみましょう。肛門管超音波装置は、先端部分を肛門管に挿入して超音波を発射。肛門括約筋の断面を撮影します。
健康な人の肛門は、2つのドーナツ状の筋肉が確認できました。ところが、便失禁の症状のある肛門は、一見すると健康な人と変わらないように見えますが、外側のドーナツ状の筋肉が欠けてしまっています。
これは外肛門括約筋が欠損してしまった状態。力を入れようと思っても、これでは力が入りません。筋力自体が低下してしまいます。
このように外肛門括約筋が欠けてしまうのは、出産による影響です。じつは産道と肛門のあいだには会陰があります。出産時に無理な力がかかると、産道から会陰に向かってタテに避けてしまうことに…。このため、外肛門括約筋まで裂けてしまうのです。これは難産のときによくおこります。
肛門括約筋の損傷の判明に30年以上
便失禁で受診する人の男女比は、女性が7~8割ほど。圧倒的に女性が多いのが特徴です。これは、もともと肛門括約筋が男性よりも女性のほうが薄いという理由が1つ。もう1つは、若いころの出産の影響です。
64歳の女性は61歳のときに突如、便失禁を発症しました。病院を受診した結果、肛門括約筋に損傷があることが判明したのです。しかし、この女性が出産を経験したのは25歳のとき。発症までに30年以上も経過しています。
会陰裂傷による肛門括約筋の損傷の場合、多くは出産直後から便失禁の症状が出るもの。しかし、症状が軽い場合は括約筋全体の力がそれを補って、便漆器が出ないこともあります。しかし、歳をとるとともに筋肉が衰えて、損傷の影響が出現。便失禁の症状が出る場合があるのです。
肛門括約筋の損傷の治療とは
肛門括約筋の損傷の治療は、括約筋形成術という手術を行うことで症状が改善することがあります。括約筋の損傷した部分を縫い合わせるというものです。手術時間は30分~1時間くらい。体の負担が少ない手術なので、術後は数日で退院可能です。
便失禁の治療を専門にしている病院はまだ数が少ないもの。まずは最寄りの肛門科や大腸肛門科を受診するようにしましょう。専門病院への紹介を受けることができます。
とはいえ、治療を受けるにあたって病院の受付などで「便漏れ」などと説明するのは恥ずかしいものです。そういったときに便利なのが「排便障害」という言葉。便秘や下痢も含まれる言葉なので、排便障害で受診に来た…と説明するのがよいでしょう。
肛門括約筋が便を止める仕組み
肛門括約筋は私たちの肛門の上にある2つの筒状の筋肉です。内側の筒状の筋肉は内肛門括約筋で、ふだんはキュッと締まっています。そこに便が降りてきて直腸に便が滞留。直腸に便が溜まったとき、私たちが感じるのが便意です。
この便意を感じたとき、じつは内肛門括約筋はゆるみます。反射で動く筋肉のために便が溜まると反射でゆるんでしまうのです。とはいえ、それでは困ります。このままでは便が漏れてしまいます。
ここで働くのが外側にある外肛門括約筋です。外肛門括約筋がギュッと締めることによって、便は止まっています。この外肛門括約筋は、自分の意思で動かせる筋肉。この力が便を止めているのです。
肛門括約筋の連携が便失禁を防ぐ
便を止めているのは、外肛門括約筋だけの力ではありません。肛門の内側の粘膜の一部にあるセンサーも活躍。センサーが直腸に溜まったものが便なのかオナラなのかを判定して、脳へ知らせているのです。
センサーは非常に繊細で、その感度は唇に匹敵するほどといいます。センサーからの情報を受けて脳はオナラすることを判断。外肛門括約筋を少しだけゆるめることで、オナラが出てくる仕組みになっているのです。
また、繊細なセンサーは軟らかい便が来たことを察知することも可能。このとき外肛門括約筋は、より強く便を止める仕組みになっています。センサーと外肛門括約筋の連携が便失禁を防いでいるわけです。
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