厚生労働省「診療報酬改定」による狙いは?
厚生労働省が2014年度の診療報酬改定を告示しました。医療費の伸びを抑えるため「重症患者向け病床」を減らすことが、その主眼です。
診療報酬全体の改定率は「プラス0.1%」。消費税率の8%への引き上げに伴うコスト増加分の手当てを除けば「実質マイナス」というのが、医療界の受け止め方。厚労省は限られたパイを「主治医」機能や在宅医療を担う診療所などに手厚く配分する一方、病院には重症患者向け病床の削減などで効率化を求めました。
「重症患者向け病床」は、1日あたりの入院基本料が現行で1万5660円ともっとも高額です。患者7人に看護師1人を配して人手をかけるためですが、実際には軽症患者の入院も多いとの指摘がありました。
そこで厚生労働省は、患者が重症だと判断するのに必要な治療行為などの要件を厳格化。高コストな重症患者向けを現在のおよそ「36万床」から、今後2年間で4分の1にあたる「9万床減らす」ことを目指しています。
診療報酬改定の適用は4月1日ですが「重症患者向け病床」については半年間の経過措置をとりました。同病床の新たな要件を9月末までに満たせない病院は、より入院料が安い病床として届け出し直すため、100床あたり年間1億円近くの減収が見込まれます。
診療報酬改定による政策誘導の成否は、医療機関の動き方次第です。入院料が安くなっても、そのぶん患者が多く集まれば収入は減らないはずですが、現実には直ちに患者が病院を移るケースは少ないでしょう。
病院が「重症患者向け病床」のために看護師を奪い合う状況は緩和される見込みです。ただし、看護師の現場の求人需要は足元では大きく減っていないのが現状。リハビリテーションを担う職員の争奪戦もおこりえる…と指摘する専門家もいます。