「特養」入居待ち50万人超!厚労省の方針は?
特別養護老人ホーム(特養)への「入居待ち」の高齢者が、2013年秋時点で約52万2千人にのぼることが、厚生労働省の集計でわかりました。4年前の前回調査より約10万人増加。待機者のうち、入居の必要性が高い「在宅で要介護3以上」は約15万2千人いました。高齢化で介護が必要な人が増え、受け皿不足はさらに広がっています。
特養は全国に約8千か所あり、約51万人が暮らしています。入居待ちの約52万人のうち、介護が必要な度合いが中重度の「要介護3~5」は約34万人。このうち特養以外の施設や病院にいる人が約19万人いる一方で、家族らの支えで在宅で暮らす人も約15万人いました。
厚生労働省は特養不足への対策として、来年4月以降は新たに入居できる人を原則「要介護3~5」に絞り込む方針です。今回調査では「要介護2以下」の人も約18万人おり、全体の34%を占めました。今国会に提出した関連の法改正案が成立すると、これらの人の大半は特養に入れなくなります。
また、都道府県別で入居待ちが最多だったのは東京都の約4万3千人。上位は大都市圏が目立ちます。
入居待ちが増え続ける背景には、高齢化のペースに整備が追いついていない実情があります。行政は財政難や土地不足を理由に、特養を大幅に増やすことには慎重です。代わりの受け皿づくりが大きな課題となります。
特養は、常に介護が必要で在宅で暮らすのが難しい人向けの施設。そこで最期を迎える人も多く、「終のすみか」と呼ばれます。厚生労働省が入居待ちの状況を前回調べた2009年から今回の2013年までの4年間に、定員は約7万5千人増えたものの、入居待ちは約10万人膨らみました。
特養不足の大きな理由は、国や地方自治体の財政の厳しさです。特養の事業者や利用者の負担を抑えるため、行政は整備費を補助しています。特養は介護サービスの中ではコストが高く、多くの自治体にとって財政の重荷。大都市では用地を確保しにくいことも新設のハードルとなります。
厚生労働省は「特養のニーズを考えると、いまの定員数は十分ではない」と認めますが、受け皿整備の重点を特養以外に移す姿勢です。具体的には「在宅医療」や介護職員が高齢者を24時間定期的に訪問するサービス、住人が見守りなどを受けられる「サービス付き高齢者向け住宅」などが柱となります。医療・介護一体で「施設から在宅へ」の流れを進める方針です。