妻のへそくりは夫の預金!?相続税の対象に…
夫婦なら夫が稼いだお金は夫婦2人のもの…そう考える人は多いはず。しかし、相続の世界でそれは通用しません。夫婦それぞれが稼いだお金はそれぞれのものという「夫婦別財産」の考え方が基本だからです。これを知らないでいると、妻はコツコツ貯めた老後の備えを自分のものにできなくなる可能性があります。
2年近く前に夫を亡くしたとある女性は、税務調査官からこんな指摘を受けました。「預金の通帳の名義は奥さまですが、実質的にはご主人のものと思われます。名義預金として相続税の課税対象になります」。夫から毎月渡された生活費をやり繰りし、残ったお金を預けた自分名義の通帳。残ったお金は好きにしていいといってた…と反論しましたが、課税対象になりました。
日本では法律上「夫が稼いだお金は夫のもの」「妻が稼いだお金は妻のもの」です。名義ではなく、そのお金は誰が稼いだのか、大きな支出の権限を持つのは誰かといった事実で判断します。専業主婦なら、相続や贈与あるいは結婚前から貯めていたお金以外に、自分の財産を持つことはありません。夫婦で協力して貯めたお金も、多くは夫のものと見なされます。
妻が貯めた「へそくり」の原資は夫の稼ぎ。夫から妻に贈与をしたという証拠もないので、名義は妻でも夫の預金となります。
あるアンケートでは「へそくり」を持つ妻はほぼ2人に1人。年代が上がるごとに金額は増えて、60代以上は200万円を超えていました。別の会社の調査では、平均416万円という数字もあります。これらは相続の際には、名義預金に該当する可能性があるのです。
贈与でも注意が必要です。ある男性は退職金の一部を新たに作った妻名義の口座に移しました。ペイオフ対策に加え、長年支えてくれた妻に感謝を込めて贈りたいと思ったからです。しかし、それを打ち明けることなく男性は死亡。妻は初めて知ったこの預金を、夫のものとして申告するように税理士から指摘されました。
いわゆる「したつもり贈与」です。名義を変えるだけでは贈与になりません。贈る側だけでなく、受ける側も認識したうえで、受ける側は通帳や印鑑を管理し自由に使える状況が必要です。夫が妻や子、孫のためにお金を贈っても、相手がそれを知らなかったり、使えなかったりしたら贈与は成立しません。