心不全治療で心筋を再生させる細胞シート治療

2014年7月に「小児初の心筋再生手術に成功」という新聞記事が掲載されました。このとき行われた心不全治療こそ、臓器を蘇らせる再生医療の最新治療「細胞シート治療」です。最新の心不全治療を詳しく見ていきましょう。『みんなの家庭の医学』で紹介されていました。

心筋に貼り付けて心不全を治療する

すると、シート内で作られた栄養が送り込まれ、弱った心筋が再生を始めるのです。実際の細胞シートを見てみると、白っぽい半透明の薄い膜。直径4cmほどの円状になっていました。これを心筋に貼り付けて心不全を治療するわけです。

細胞シート治療で行われるのは合計2回の手術。1回目は太ももの筋肉を採取する手術です。その筋肉から筋芽細胞と呼ばれる、心臓の細胞に極めて似ている細胞を取り出します。そして1か月以上培養して、細胞シートを作るのです。

2回目はでき上がった細胞シートを、20cmほど胸にメスを入れて直接、心臓に貼り付ける手術。あとは細胞シートから送られる栄養で心筋が再生して、心臓機能が回復するのを待つのです。

大阪大学の澤教授の臨床研究は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構によるプロジェクト。さらに大阪大学はテルモ株式会社と共同研究を進め、先端医療開発特区「スーパー特区」の「細胞シートによる再生医療実現プロジェクト」に参加してきました。

テルモは2014年10月、心不全患者の治療のための心臓の再生医療を事業化するため、骨格筋芽細胞シートを再生医療等製品として、厚生労働省へ製造販売承認申請を行いました。

テルモは2007年から心筋再生の細胞シートの開発に着手。2012年から国内3医療機関で心不全治療の治験を実施していました。なお、安全性などの厚生労働省の審査には1年ほどかかる見通しです。