「争続」にならないため…親の介護の注意点
定年退職の前後は自分の老後資金対策だけでも大変ですが、親の介護や相続問題なども抱え、頭を悩ますことが多くなる時期です。親の介護が必要な状態になると、家族が介護する期間は4年を超えることが多く、家族の負担は重くなります。
一般的に親は収入がないわけではありません。多額ではないものの、年金があります。しかも年金収入は現役時代の給料と異なり、寝たきりになっても減額されることはありません。
また、要介護に認定された人は公的介護保険が使えます。必要な支援や介護の度合いに応じて、月約5万~36万円の介護サービスを1割の自己負担で受けられます。在宅介護や特別養護老人ホームのような公的施設に入所する場合は、保険と年金で大半は賄えます。従って、子どもに多額の資金負担が生じることはそうはありません。
ただし、家族にも影響がまったくないわけではありません。在宅で介護するには、共働きの夫婦ではどちらかが仕事を辞めることになることが多いからです。そのぶん収入がなくなるので、注意が必要です。
多くの共働き夫婦は、収入の少ない妻が仕事を辞めるケースが多いようです。子供の進学など教育費がかかり、家計にとってもっとも苦しい時期か、退職に向けて最後となる「貯めどき」と重なることが多くあります。
こんな大切な時期に、妻が辞めて収入が減るのは家計にとって大打撃です。介護費用はできるだけ親のお金を使いましょう。何に使ったかわかるように、後々トラブルにならないように、明細書をとっておきます。また、家族と同居している場合、介護費用をどう負担するのか遺言書にまとめておきましょう。
本人が書く自筆証書遺言は手軽ですが、代筆やパソコンで作ると無効となるので注意してください。書店で売っている「遺言書作成キット」などを利用すると便利です。法的に有効な遺言を作成するポイントや注意点をおさえることができます。
理想は「公正証書遺言」を公証人に作ってもらうことです。費用はかかりますが、法的な問題は発生しにくくなります。家族ならわかり合えると安易に考えず、「相続」が「争続」にならない対策をしっかりとりましょう。