深刻化する特別養護老人ホームの人手不足!
とある特別養護老人ホームの食堂、30人超の入居者が朝食中。夜勤明けの職員2人は、トイレ誘導や薬の配布に追われていました。すると、入居者の1人の意識がありません。食べ物をのどに詰まらせたのです。すぐに救急車で搬送されましたが、病院で治療を受けたもの意識を取り戻すことなく死亡しました。
男性の正規職員がずっと恐れていたことです。この時間帯は人手が足らず、増員を施設長に求めていました。ところが「働き方が非効率」「人を増やせばいまの職員の給料を減らす」…こんな言葉が返ってきたのです。
「食事介助」「おむつ交換」「シーツ交換」「ゴミ捨て」「入浴」…分刻みの流れ作業。利用者とおしゃべりする余裕はありません。入居者に話しかけられ立ち止まると、「仕事して」と先輩職員から注意されます。
夜勤は多いときで月7回。夜は職員3人で70人ほどの世話を行います。ナースコールがあちこちでなり、そのたびに走り回ります。男性職員の月給は手取りで21万円ほど。1人息子を妻と共働きで育てています。
この男性は、数年前まで介護とは別の仕事をしていました。しかし、祖母が認知症になり特養に入所。栄養摂取の管を鼻から外そうともがき、家族や職員に止められてはつらそうな表情を見せていたのです。いい介護をしたい…と、自らヘルパー2級を取得して転職したのです。
しかし、理想と現実の間で苦しむ毎日です。食事中、トイレに行きたがる入居者を食堂に引き戻し、泣かれたこともあります。「人生を豊かにする仕事のはずなのに、その人の尊厳を奪っている」と感じることも…。いまは職場で労働組合を結成。職員配置などについて法人側と交渉を始めています。