遺言を作成して「介護の負担」を担保すべし
義理の親と同居して献身的に介護をした嫁でも、いざ相続が発生すると理不尽な思いをすることがあるのが現実です。ただし、遺言を活用したり、養子縁組してもらったりすれば介護の苦労が報われる可能性もあります。
首都圏在住の女性は、義理の母親名義の家に同居。身の回りの世話をしてきました。高齢となって足腰が衰えた義母の介護は気が抜けません。これまで「嫁だから仕方がない」と考えてきましたが、相続で住む家を失うかもしれないと知り、心中穏やかで居られなくなったのです。
義母の法定相続人は長男である夫と、離れて暮らす次男と長女の3人。財産は自宅のほかに預貯金が少しあるだけで、仮に次男と長女がそれぞれ法定相続分を主張すると、家を売却して現金を分けるか、夫が弟妹の相続分の現金を用立てるしかありません。義母が遺言を書いてくれればよいですが「介護しているのだから遺言で家をください」と頼むのは極めて難しいでしょう。
妻の不安を察した夫は最近、「資産運用のことを相談しておこう」と義母に声をかけ、一緒に信託銀行に出向きました。「身の回りの世話はどなたが?」といった担当者のさりげない問いかけから、自宅を夫に相続させる遺言が固まったといいます。弟妹には相談していませんが、夫は「2人とも経済的に困ってはいないので納得してくれるはず」と考えています。