好酸球性が原因の中耳炎で聴力ゼロの可能性
放置しておくと最悪の場合は聴力ゼロになってしまうという、高齢者がかかる恐ろしい「中耳炎」があります。その病名は「好酸球性中耳炎」。これはぜんそくによって増えた好酸球が原因で、中耳炎を引き起こしているのです。実際の症例を見ながら、そのメカニズムと見分け方を見ていきましょう。
治療しても2~3日で聞こえが悪くなる
好酸球性が原因の中耳炎にかかった67歳の男性は、治療が遅れたために聴力を半分以上、失ってしまいました。『ためしてガッテン』で紹介されていました。
それは37歳のとき、耳が聞こえにくくなったので病院へ行くと、滲出性の中耳炎と診断。治療で聞こえは回復しました。しかし2~3日すると、再び聞こえが悪くなってしまうのです。繰り返し病院にいってもいつもと変わらない治療。次第に症状は悪化していきました。
いくつもの病院を訪ね歩き、ようやく適切な治療が受けられるようになったのは、じつにその7年後。きっかけは、ある医師との出会いです。
増えてしまった好酸球は暴走して攻撃する
当時、中耳炎は原因がハッキリしており、ほとんど治すことができる病気とされていました。ところが90年代になると、その医師の元にはどうやってもらない原因不明の中耳炎患者が続出したといいます。
普通の抗菌薬でもすぐ再発、点耳薬も効果が出ませんでした。そこで、ほかの医師と連携して患者をリストアップしてみると、難治性の中耳炎の患者が共通して「ぜんそく」持ちであることがわかったのです。
なぜこのようなことがおきるのでしょうか? 私たちの血液の中には「好酸球」という白血球の仲間がいます。肺の中にウイルスが入ってくると、この好酸球がやっつけてくれるのです。
ぜんそく患者の場合、この好酸球がものすごく増えてしまいます。増えてしまった好酸球は暴走して、敵もいないのにあちこちに攻撃を仕掛けてしまい、炎症をおこしてしまうのです。これが気管支でおこるのが、いわゆるぜんそくの症状です。
好酸球が原因で中耳炎を引き起こしている
これが耳の中でも同じように発生するのが、この難治性の中耳炎。敵もいないのに攻撃をして、中耳炎を引き起こしているのです。
しかも、放置すると耳の中にポリープができて変形してしまいます。こうなると、外から入ってくる音の振動がうまく伝わらなかったり、耳の神経自体が破壊されてしまい、最悪の場合は聴力がゼロになってしまうのです。
じつは、この「好酸球性中耳炎」が最近とくに増えているとか。その背景には、ぜんそく患者も増えていることが関係しています。
以前はぜんそくに対して、全身的なステロイドによる治療が行われていました。それが最近では、吸入型の気管支だけに効くステロイドを使用するようになっています。このため、好酸球性中耳炎が増えているのです。
成人で発症したぜんそくに加えて「耳が遠くなった」「耳垂れが出てくる」などの症状が現れたら、好酸球性中耳炎の可能性が大。すぐに病院を受診しましょう。
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