アディポネクチンを増やして生活習慣病を防ぐ
脂肪は食べ物がないときでも生きのびるためのエネルギーを蓄える大切な組織です。しかも脂肪は健康を維持する数々の作用を持つ「アディポネクチン」を作ります。しかし、脂肪をためすぎるとアディポネクチンを作る能力が低下し、糖尿病や高血圧などさまざまな病気を招くのでした。
アディポネクチンの数々の作用
1996年に脂肪細胞が作る「アディポネクチン」が発見されて以来、脂肪は臓器に似た働きをもつ重要な器官との見方が定着しました。脂肪細胞は単にエネルギーを貯蔵するだけではないのです。
正常な脂肪細胞はアディポネクチンをたくさん作ります。アディポネクチンは、内臓脂肪から分泌されるタンパク質。健康を維持する数々の作用を持っているのです。
血糖値を調整するホルモンであるインスリンの働きを増強して糖尿病を防ぐのもアディポネクチンの作用。血管を広げて血圧を下げる役割も果たします。さらには、脂質の分解を促して動脈硬化を防ぐのもアディポネクチンの作用なのです。
アディポネクチンを作る能力が低下
ところが、過剰に脂肪を蓄えた脂肪細胞はアディポネクチンを作る能力が低下します。これが肥満で糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病を発症するリスクが高まる理由です。
肥大した脂肪細胞は、さらに都合の悪い物質を作り出します。炎症をおこす物質や血圧を上げる物資、血液を固まりやすくする物質とそれらはどれも悪いものだらけ。これらも生活習慣病につながる要因になるのです。
脂肪細胞が両極端の働きをするのは、脂肪細胞自身を守る機能が働いているため。脂肪細胞が肥大化すると周りの血管が窮屈になりますが、それでも脂肪細胞に栄養を送り届けようとして血圧を高めるのです。
また、インスリンの効きが悪くするのは、脂肪細胞が余分な脂肪をこれ以上取り込まないようにするため。とはいえ、結果的にこれが体全体にとっては悪い方向に働いてしまうというわけです。
アディポネクチンは内臓脂肪に逆相関
なお、脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があります。皮下脂肪は長期のエネルギー貯蔵に適し、消化器官周辺にある内臓脂肪は短期間の貯蔵に向いているものです。皮下脂肪は女性に、内臓脂肪は男性につきやすいといわれます。
そして、健康に害があるのは内臓脂肪の肥満です。じつは相撲の関取は太っていても内臓脂肪は健康な人と変わりません。このため太っているからといって必ずしも、生活習慣病になりやすいわけではないのです。
じつは、血中アディポネクチン濃度は内臓脂肪量に逆相関するともいわれています。生活習慣病と密接に関わっているのは、脂肪の中でもとくに内臓脂肪です。最近では、糖質制限食でアディポネクチンが増加するという報告もあります。
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