「ウイルス」による食道がん治療の臨床研究
岡山大学の研究グループは、がん細胞だけを狙い撃ちして破壊する特殊なウイルスを使って「食道がん」を治療する臨床研究を始めました。5年間に12人の患者に投与して、放射線治療も併用しながら効果を確かめる計画。国内での新しい治療法の承認に必要な臨床試験につなげる予定です。
使用されるのは腫瘍融解ウイルス「テロメライシン」。岡山大学で開発された抗がんウイルス製剤で、同大発のバイオベンチャー「オンコリスバイオファーマ」によって臨床開発が進められています。風邪などの原因となるアデノウイルスを遺伝子操作し、がん細胞だけで活発に働いている酵素によって増殖するよう工夫されたものです。
「テロメライシン」がヒトのがん細胞に感染すると、一日で10万~100万倍に増え、がん細胞を破壊します。正常な細胞にもウイルスは感染しますが、増殖しないために副作用などはおこりにくいと考えられます。
ウイルスを使う治療法は従来の手術や抗がん剤などに比べて患者の負担が少なく、効果が長続きする利点があると期待されています。研究グループでは、今回の臨床研究が順調に進んで安全性と効果が確認されることによって、高齢や合併症などの理由から標準的な手術や抗がん剤治療が受けられない食道がん・頭頸部がんの患者にとって有効な治療法となることを期待しています。
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