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便失禁は弱った括約筋の種類で治療法が異なる

自分の意思とは関係なく、ちょっとした弾みで便が漏れてしまう「便失禁」。その症状の出方や原因はさまざまです。そこで登場したのが、あらゆる便の症状を専門的に扱う「排便機能外来」。排便機能外来は弱った肛門括約筋の種類で治療法が異なるなど、便に特化した診察を受けられます。『みんなの家庭の医学』で紹介されていました。



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便失禁は弱った括約筋の種類で治療法が異なる


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排便機能外来は便に特化した診療科

便失禁の原因として、もっとも多いといわれているのが加齢により肛門括約筋がゆるんでしまうことです。さらに、過度のアルコール摂取などで便がやわらかくなりすぎて漏れてしまうものや、がんをはじめとする病を原因とするものまで、その原因は多岐にわたります。

そのため、従来の病院の診療科では対応しきれず、便失禁の原因の特定は難しいとされてきました。そこで登場したのが、あらゆる便の症状を専門的に扱う「排便機能外来」です。

2013年6月、埼玉県の指扇病院に排便機能外来は開設。さまざまな診療科の垣根を越えた、便に特化した診察・治療を行っています。実際に便失禁に悩む患者の症例を見ながら、排便機能外来の治療を見ていきましょう。


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加齢による括約筋のゆるみという診断

東京近郊に住む81歳の女性が、便失禁に悩まされ始めたのは8年前、73歳のときでした。尿意を感じてトイレに座った女性は、下着にあるシミに気づきました。小さじ1杯分ほどの水っぽい便がいつの間にか漏れていたのです。

その2か月後、便漏れのことなど忘れかけていたその矢先、気づかないうちにまた便失禁がおきていました。そしてそれを期に、ほぼ2ヵ月に一度のペースで、同様の便失禁に襲われるようになったのです。

大腸がんを疑って近所の胃腸科クリニックを訪れた女性。さっそくレントゲン検査が行われ、大腸にがんなどの異常がないか徹底的に調べられました。しかし、検査は異常なし。医師は便失禁の原因が病ではなく、加齢による括約筋のゆるみという判断です。これといった治療は行われませんでした。


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括約筋を鍛える体操も効果がなかった

その後、女性は加齢による便失禁によいという括約筋を鍛える体操を実践。ところが便失禁は一向に治まりません。気づかないうちに便が漏れ、下着を汚しているのです。それでも恥ずかしさから、この悩みを家族の誰にも打ち明けられませんでした。

そんな女性を新たな異変が襲います。その瞬間、便を漏らしたという実感に襲われました。自宅のトイレに駆け込むと、やわらかめの便が下着からあふれそうなほど大量に漏れていたのです。

もはやこの異変を1人で抱え込むことができませんでした。意を決して便失禁や病院での検査結果のことを、家族にすべて打ち明けたのです。すると、家族からはもう一度、大きな病院でしっかり診てもらったらほうがよいといわれました。

そんな家族の思いに勇気付けられた女性は徹底的に検査しようと、肛門科や婦人科、総合病院の内科を訪れました。ところがどの診療科に行っても便失禁の原因はわからずじまい。漢方薬などを試してみても、症状は一向に改善されません。


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内肛門括約筋の機能低下という診断

それどころか便失禁の頻度はますます増加。このころには、月の半分は漏れている状態だったといいます。なかばあきらめかけていたところに、家族が排便機能外来の存在を知れせてくれました。

排便機能外来を最初に訪れたとき、女性に手渡されたのは「便失禁問診票」。42項目の設問から便失禁の原因と治療法を探り出すものです。そして、気づかないうちに漏れているという症状に注目した医師の診断は、内肛門括約筋の機能低下による「漏出性便失禁」でした。

じつは便失禁のタイプは大きく2つに分けられます。1つは、便意を感じずに知らず知らずのうちに便を漏らしてしまう「漏出性便失禁」。もう1つは、便意を感じるもののトイレまで我慢できずに漏らしてしまう「切迫性便失禁」です。


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弱った括約筋の種類で治療法が違う

そして、この2つの便失禁に共通するおもな原因こそ肛門の筋肉。肛門の周囲には意識していなくても肛門を締めてくれる「内肛門括約筋」と、意識して肛門を締める「外肛門括約筋」という2種類の筋肉があります。

この女性の場合は、加齢により内肛門括約筋が弱まり始めたうえに、もともとの軟便が重なることで便失禁になってしまったと診断されたのです。投薬治療によって受診前より便失禁の回数が減り、治療の効果が徐々に現れ始めています。

現在この排便機能外来では、内肛門括約筋の機能低下には投薬治療、外肛門括約筋の機能低下には筋肉を鍛えるバイオフィードバック療法が行われています。

さらに新たな便失禁の治療法である「仙骨神経刺激療法」を導入。これは排便を司る神経である仙骨神経に、電気刺激を与えて排便機能を回復させる最新治療法です。便トラブルに悩んでいる人は、全国にある専門外来を受診してみてください。

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