「成年後見制度」失敗しないための基礎知識
「成年後見制度」は2000年にスタートしました。親族らが申し立てをすると、家庭裁判所が「後見人」を選定。利用者は2012年末時点で16万人強で、2011年より8.5%増えています。
しかし「母親の後見人をしていた息子が、預金660万円を着服した」「後見人として管理していた叔父の郵便貯金計1,100万円を横領した」…後見人の横領容疑事件は毎月のように記事になっています。
最高裁によると、2010年6月~2012年12月までの2年半で、後見人による横領などの不正は計1,058件発生。被害総額は94億4千万円に達します。その9割以上が、親族の後見人による不正です。不正が発覚すれば後見人は解任され、悪質なケースは刑事告発されます。
後見人は、本人のために口座を開いて生活に必要なお金を引き出したり、年金や家賃収入の受け取りをしたりもします。居住用の不動産を除き、本人の財産を処分することも可能です。本人の権利を守るために成年後見人には財産管理の幅広い代理権が与えられています。
これを「自分の意のままに財産を処分してよい」と勘違いしてしまうことが多いようです。実際、自分が悪いことをしていると思っていないケースも目立ちます。「いずれ自分が相続する分だから」「面倒を見ている見返りで」といって、罪の意識もないまま、本人のお金を使ってしまうのです。
親族後見人の不正が増えたこともあり、最近は「後見制度支援信託」の利用を家裁がすすめるケースも増えています。これは2年前に導入された制度で、本人の財産のうち日常的に使うお金を後見人が定期的に受け取って管理、それ以外のお金は信託銀行に信託しておく仕組みです。
ただし、信託財産をめぐって相続を期待する親族らの意向が働いて、本人のために財産が活用されなくなるのでは…という懸念もあります。
後見人には、弁護士や司法書士ら専門職が選ばれる場合もあります。しかし、2010年6月~2012年12月に専門職による不正も26件発生。2013年10月には、東京弁護士会の元副会長が、女性の定期預金を着服したとして業務上横領の罪で実刑判決を受けました。